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ひこまるの可愛いナンパブログ

夜遊会 会長ひこまるの夜遊び日記

あらいぐまヒコマル・小説・後編

小説
 
 
 
ある日の朝、いつもの様にサクラちゃんに起こされる。
 
「ヒコマルー!朝よー!!起きなさい!!」
(ふぁ~・・・眠いな~)
ベットで寝ていたボクは起こされた。
 
部屋の中は暖炉の熱で暖かく、季節は冬になり冬独特の匂いが部屋中に漂っている。
眠い目を擦りながらサクラちゃんと朝食を食べる。
今日の朝食は昨日、森の川で獲った魚とカボチャのスープ、あとフランスパンだ。
(もぐもぐもぐ・・・やっぱりサクラちゃんの料理は美味しいな~)
朝食を食べ終える頃サクラちゃんが話し出した。
 
「あっ!そうだ!今日はヒコマルにプレゼントがあるんだ!」
(えっ?プレゼント?なんだろう・・・)
そう言ってサクラちゃんはタンスの方に向かい、タンスから何かを取り出し、またボクの方に戻ってきた。
「はい、プレゼント」
サクラちゃんがボクの首に何かを巻きだした。
(これは・・・)
「ヒコマルのために編んだんだ。タヌキ様のマフラー」
それは、サクラちゃんが編んでくれたマフラーだった。
カフカのマフラーはボクのサイズにピッタリだ。
マフラーの柄はボクの体と一緒の黄土色をしていて横に黒い横縞が入っている。
「ふふっ、ヒコマルの尻尾をイメージして作ったの」
笑いながらサクラちゃんが言った。
ボクはすごく嬉しかったが、照れ隠しに叫んだ。
『尻尾と一緒の模様を首に巻くなんて変だよ!絶対おかしいよ!』
「ヒコマルそんなにキューキュー鳴かないの、そんなに嬉しかったのね!」
『違うって!嬉しくなんかない!あと、ボクはアライグマ!!』
「はいはい、じゃあ食器を片付けて朝の散歩に行こうねヒコマル」
そう言ってサクラちゃんは朝食の後片付けをしだした。
(このマフラー変だけど、ありがとう・・・大切にするよ)
 
 
片付けを終えサクラちゃんといつもの様に朝の散歩に出る。
外は家の中の暖かさとは違い、澄みきった冬の朝の寒さがした。
でも今日はいつもより少し暖かい、きっとサクラちゃんが作ってくれたマフラーのおかげだ。
サクラちゃんと家の周りの草原を歩く。
ボクはいつもサクラちゃんの隣にピッタリくっついて歩いた。
朝の散歩でサクラちゃんはいろんな話をしてくれた。
料理の話、編み物の話、森の植物や動物の話。
サクラちゃんの話を隣で歩きながら聞くのがボクは大好きだった。
でも、サクラちゃんはなぜかこの家に一人で暮らしているのかは話してくれなかった。
ボクはずっと不思議に思っていた。
 
散歩も終わり、家の方に向かって歩いている時、サクラちゃんが話し出した。
「そうだヒコマル、今日はお昼にお客さんがうちに来るから、おとなしくしておくんだよ」
(家にお客さん来るって珍しいな~)
ボクらは家に戻り、昼食までの間ゆっくり過ごした。
 
 
 そして昼食を食べ終え、家にサクラちゃんの言っていたお客さんがやってきた。
家の玄関から男性の声がする。
「ごめんくださーい」
「はいは~い」
サクラちゃんが返事をする。
「ヒコマルちょっとの間、向こうの方でおとなしくしててね」
そう言ってサクラちゃんはお客さんを家に招き入れた。
ボクは部屋の隅に行き、言われた通りじっとしていた。
部屋に入ってきたお客さんは初老の男性で大きなカバンを持ち、白衣を着ていた。
二人はテーブルで向かい合い、何やら話をしている。
ボクは耳を澄ませて二人の会話を聞いた。
「ーーー体調に変化はない?」
「はい、大丈夫です」
「血液検査の結果、今のところ安定しているけど、またいつ急に悪くなるかわからないから気をつけるんだよ」
「・・・はい、ありがとうございます」
サクラちゃんは見たことないような悲しそうな顔をしている。
(サクラちゃんどこか悪いのかな?最近寒くなったし風邪かなぁ?)
 「少し気になるところもあるから、また来週来るね」
「はい、あの・・・・・」
「何かな?何か聞きたいことがあるのかい?」
「・・・いえ、大丈夫です。ありがとうございました」
「では、また来週。お大事に」
そう言って白衣を着た初老の男性は家から出て行った。
(あの人、やっぱりお医者さんだ!サクラちゃん大丈夫かなぁ?)
ボクは悲しそうな顔をしているサクラちゃんの方へ行った。
『サクラちゃん大丈夫?どこか悪いの?』
サクラちゃんはボクに気づき、いつも通りの笑顔に戻った。
「あっ、ヒコマルごめんね。変なところ見せちゃったね」
『それよりもどこか悪いの?』
ボクは首をかしげた。
「はいはい、そんなにキューキュー鳴かないの・・・」
「そうね、ヒコマルにはまだ話してない事があったね。」
また少し悲しそうな顔をしてサクラちゃんが言う。
 
「私ね・・・------」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それから、サクラちゃんは自分の過去と病気について話してくれた・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
サクラちゃんの病気は血液の病気らしい。
詳しくは話してくれなかったが半年前にこの病気が分かってからこの家に住んでいる。
サクラちゃんの両親はサクラちゃんがまだ幼い頃に事故で亡くなったらしく、それからは親戚に引き取られ親戚と暮らしていた。
病気が分かった途端、親戚は森の自然豊かな場所で暮らした方が病気も治ると言って、この家にサクラちゃんを一人で住ませたみたいだが、実際はサクラちゃんを邪魔者扱いしたみたいだ。
それからサクラちゃんは一人でここに暮らした。
毎月生活に必要な最低限のお金と、月に一回診察に来るお医者さんの治療以外のことは何でも一人でやってきた。
病気の症状は現在落ちついているが、この病気は完全に回復することは難しく、またいつ悪化するかわからないみたいだ。
それでもサクラちゃんは頑張って一人で暮らし、ボクと出会ってからは自分の病気は隠して、料理を作って、遊んで、いつもボクに笑顔で接してくれた。
 
サクラちゃんの話しを聞いてボクは涙が出そうになった。
泣きそうになったが笑顔で話すサクラちゃんを見てボクも泣かないと決めた。
サクラちゃんは話し終わった後、最後にこう言った。
「でも私は大丈夫!この病気を治してもっと元気になるんだ!そしたらヒコマルと毎日森に行って、魚を獲ったり、木に登ったりして遊べるね!」
 
その日はいつもの様に夜ご飯を食べてサクラちゃんとベッドに入った。
布団の中、いつも以上にボクはサクラちゃんにくっついて眠りについた。
 
 
 
 
 
 
 
その日からサクラちゃんの容体に少しづつ変化が出てきた。
 
 
何気ない会話の途中に咳が出たり。
 
ご飯を食べる量も減ってきて。
 
お医者さんが家にくる回数も増えてきた。
 
毎日の朝の散歩は三日に一回になり。
 
森まで歩く道の途中でよく息を切らし、何回も座り休憩した。
 
身体も少しづつ細くなってきている。
 
 
それでもサクラちゃんは毎日ボクに料理を作ってくれた。
 
森へは遊びに行けなくなったが
「ヒコマルまたすぐに元気になるから、そうしたら森に遊びに行こうね」 
と、ボクに言いボクの頭を撫でてくれた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
年末が過ぎ、年が明け、朝の散歩は無くなった。
 
 
 
 
サクラちゃんの病気はどんどん悪くなっていく。
料理を作る以外の時間は、ほとんどベットで寝たきりになっていた。
 
ある日の昼、お医者さんが来ていた時、サクラちゃんとの会話が聞こえてきた。
「-----明日から抗癌剤を投与しましょう」
「・・・はい、先生・・私、それで良くなりますか?」
弱々しい声でサクラちゃんが言った。
「うーん、期待は薄いけど良くなる人もいてる。ただ・・・」
「ただ?・・・・」
「ただ、副作用があるから強い吐き気と脱毛が起こるよ」
「えっ・・・でも良くなるのなら、お願いします」
「わかりました。ではまた明日、お大事に」
「ありがとうございます・・・・」
そう言ってお医者さんは出て行った。
ボクはすぐにサクラちゃんの方へ駆け寄る。
『サクラちゃん・・・大丈夫?・・・』
「ヒコマル・・・」
『サクラちゃん絶対良くなるから!良くなってまた遊ぼうよ!』
「・・・ヒコマル・・・そんなにキューキュー鳴かないの・・・」
弱々しくなった声でサクラちゃんが言った。
 
 
 
次の日からサクラちゃんへの抗癌剤の投与が始まった。
 
食欲もより一層なくなり少し食べては吐いてを繰り返した。
 
サクラちゃんはどんどん細くなり日に日に元気を失っていた。
 
それでもまだ、毎日ボクに
「また元気になるから森で遊ぼうね」
と言って、頭を撫でてくれた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
抗癌剤の投与を始めて一週間、サクラちゃんの長い髪の毛はほとんど抜け落ちた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それから数日後の午前中、寝ていたボクはサクラちゃんに起こされた。
「起きて・・・ヒコマル・・今日は森に遊びに行くよ」
『えっ?でもまだ病気良くなってないよ、やめた方がいいよ!』
「・・・大丈夫、今日は体調が良いの」
弱々しい声で笑いながらサクラちゃんが言う。
『でも、サクラちゃんに何かあったら!!』
「ヒコマル、そんなにキューキュー鳴かないの・・・さぁ・・行くよ」
そう言ってボクに尻尾の柄をしたマフラーを巻いてくれた。
 
家を出てボク達はゆっくり森の方へ歩いた。
元気だった頃のサクラちゃんとは違い弱々しくゆっくりと歩くサクラちゃん。
ボクはいつも以上にサクラちゃんに寄り添って歩いた。
「・・・こうやってヒコマルと森まで歩くの久しぶりだね」
『サクラちゃん・・・』
ボクは嬉しかった、こうやってサクラちゃんとまた遊びに行けたことが。
それと同時にサクラちゃんの体調が心配だった。
(何かあったらボクが助けるんだ!)
そう思い、ボク達はゆっくり休憩をとりながら森の中の川へ向かった。
 
時間は掛かったが、何とか無事に川までたどり着いた。
サクラちゃんはすごく疲れていたが、体調も大丈夫みたいだ。
久しぶりに森に来たおかげで、いつもの笑顔に戻り
「ヒコマルー・・たくさん遊んでおいでー・・・」
と、嬉しそうに言ってくれた。
ボクも嬉しくて、サクラちゃんの周りを走り回った。
そして、木に登った。
サクラちゃんは座って、ずっとボクの方を見ながらニコニコ笑っている。
(よし!今日はできるだけ高い木に登るんだ!)
ボクは木から木に飛び移り、どんどん高い木を目指した。
「ヒコマルーすごーい・・けど、危ないよ~・・・」
サクラちゃんは笑っている。
それから、川でも遊んだ。
ボクは魚を獲った。
サクラちゃんに褒めてもらいたくて、いつも以上にたくさんの魚を獲った。
「本当にヒコマルはすごいね・・・魚獲り上手だね~・・・」
『まだまだ、たくさん獲れるよ!サクラちゃんが喜んでくれるならもっともっと獲るよ!!!』
「もう、そんなにキューキュー鳴かないの・・・けど、こんなにたくさん持って帰れないよ」
そう言ってボクの頭を何回も撫でてくれた。
 
ボク達はたくさん遊んだ。
そして、陽が暮れる前にゆっくり休憩を取りながら家に帰った。
 
「ヒコマル、今日は久しぶりの森・・楽しかったね・・・」 
(うん!すごく楽しかったよ!!)
「私、久しぶりにあんなに歩いたから・・少し疲れたな~・・」
(サクラちゃん・・・無理させてごめんね・・・)
「今日はもう寝ようか・・・」
そう言ってサクラちゃんはベットに入った。
ボクはすぐ追いかけてサクラちゃんの隣で一緒に寝た。
 
(あぁ、今日は本当に楽しかったなぁ。また、サクラちゃんと森へ遊びに行きたいなぁ・・・・)
 
そんな事を思いながらボクは眠りについた・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
しかし、その思いは叶うことは無かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
次の日から、サクラちゃんの容体はまた悪くなった。
 
一日中ベットの上で寝たきりになり、嘔吐を繰り返した。
 
その日から三日が経ち、サクラちゃんはベットから起き上がる事も出来なくなっていた。
 
また痩せていくサクラちゃん。
 
言葉を発する事も辛そうだ。
 
ボクと出会った頃の元気なサクラちゃんはもういなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ボクらの別れは突然だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三日目の夜、ベットで寝ているサクラちゃんの隣にボクは寄り添っていた。
 
 
 
 
目を閉じているサクラちゃんが小さな声で言った。
 
「・・・ねぇ・・・・ヒコマル・・・・」
 
(!?)
 
「・・・・・・・ありがとう」
 
(えっ???)
 
「・・・私・・もう・・・ダメみたい・・」
 
ボクは叫んだ!
 
『えっ!?何を言ってるの?サクラちゃん!!』
 
「・・・・最後に・・・ヒコマルと・・・・・・」
 
『最後って何!?しっかりしてよサクラちゃん!!』
 
「・・ヒコマルと・・暮せて・・・幸せだった・・・」
 
『ねぇ!何言ってるの!?これからも一緒に暮らそうよ!?』
 
サクラちゃんは震える手で、ゆっくりボクの頭を撫でた・・・
 
『また、元気になるって約束したよね!!』
 
『森にも行くって言ったよね!!』
 
『いやだ!!死なないで!!ねぇ!死なないでサクラちゃん!!!』
 
・・・・・・・
 
「・・・・・ヒコ・・マル・・・」
 
(!?)
 
 
 
(・・・そんな・・に・・キュ・・ウ・・キュ・・・ウ・・・・・・鳴か・・・な・・・い・・・・・・の・・・・・・・・・)
 
 
 
ボクの頭の上にあったサクラちゃんの手が崩れ落ちた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それからボクは鳴いた。
 
鳴いて鳴いて鳴きじゃくった。
 
その夜、ボクのキューキューとした声は森中に響き渡った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どれだけの時間が経っただろう。
 
鳴き疲れたころ、冷たくなったサクラちゃんの隣でボクも意識が遠のいていった。
 
なんだか体が動かない・・・
 
寒いし・・・眠たいなぁ・・・・・
 
サクラちゃんとの思い出が頭の中で走馬燈のように浮かんできた・・・
 
 
ボクは目を閉じた・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ボクはあらいぐま。

名前はヒコマル。

ボクの飼い主であり友達でもある《サクラちゃん》が付けてくれた名前。

黄土色の体毛をもち、眼のまわりから頬にかけて黒い斑紋がある。

まんまるとした体つきがタヌキとよく間違えられるが、タヌキとの違いとして長いふさふさとした尾には黒い横縞があるのが大きな特徴だ。

大好物は魚とフランスパン。

 あとサクラちゃんが作ってくれた料理は全部大好きだ。
朝、無理やり起こされて行く散歩も、森でサクラちゃんと遊ぶことも、サクラちゃんとベットで一緒に寝ることも、全部、全部大好きだ。
宝物はサクラちゃんが編んでくれたマフラー。
変な柄だけどボクはすごい気に入っている。
 
あぁ、今度生まれ変わったら人間になりたいなぁ。
 
人間になって、またサクラちゃんと一緒に・・・
 
ずっと一緒に暮らすんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ボクはサクラちゃんと一緒に、長い眠りについた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あらいぐまヒコマル   おわり