ひこまるの可愛いナンパブログ

夜遊会 会長ひこまるの夜遊び日記

夢で逢えたから・小説・前編

 
 
 
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夢を見ている。
 
これはあの頃の夢だ。
 
ぼんやりとあった意識が遠のいていく中、僕はあの頃の自分の後ろ姿を見て再び眠りについた……
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 【夢で逢えたから】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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僕が生まれた町は山と海に囲まれた坂の街で、春は川沿いに桜が咲き、夏は蝉の声と眩しい陽射しが射し、秋は山の色が真っ赤に染まり、冬は雪で町中が白く染まる、そんな自然が豊かな町だった。

 
この町で生まれ普通のサラリーマンの父とその父を支えながらパートで働く母に何不自由なく育てられた僕は順風満帆に育ち14才の中学二年生になっていた。
 
朝、眠い中いつもの様に母に起こされる。昨日深夜まで観てた世界を旅して回りながら恋愛をする番組のせいで僕は寝不足だ。
まだ寝たい気持ちを抑え、少し小さくなった制服に着替えて朝食を食べるためリビングに向かう。
そして朝食にバターを塗った焼きたての食パンを食べ、熱々の珈琲を飲む。
僕は家を出て学校へと歩き出した。
外の空気は涼しく透き通っており季節は秋から冬に変わろうとしていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
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僕らの通う学校はこの町の端の山の麓にあり全校生徒が二百人位の小さな学校だ。麓の坂を上り正門では教育指導の先生が朝から生徒の身だしなみを注意している。
僕は身だしなみを整えて何食わぬ顔でその横を通り過ぎて教室へ向かう。教室に入ると毎日見慣れたクラスメイトがホームルームまでの時間、雑談をしている。
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朝のホームルームが始まり眠たい目を擦りながらどうでもいい先生の話しをぼんやりと聞いていた。
 
 
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ふと気づくと僕は無意識のうちに斜め前に座っている女の子の方を見てた。
その彼女も少しあくびをしながらどうでもいい先生の話しを聞いている。
 
この時僕は彼女に恋をしていた。
 
陸上部に所属する彼女は天真爛漫で誰からも愛される性格をしていて、長く束ねた髪と日焼けした健康的な肌が僕にはとても魅力的だった。
この中学に入学して一年生の時、隣のクラスの彼女に一目惚れしてすぐ好きになった。
二年生で彼女と同じクラスになると僕は心の中で歓喜し彼女と少しでも会話をした日は一日中ドキドキしてとても幸せな気分になった。
 
そして体育祭や学園祭の学校行事で自然と彼女と仲良くなり彼女のことを知っていくうちに僕はもっと彼女を好きになった。
 
けれどこの想いは彼女に伝えることは出来なかった。
そしてこれが僕の初恋だった。
 
またふと気づくといつの間にか先生のどうでもいい話しは終わっていた。
 
ホームルームを終えるチャイムが鳴る。
 
慌ただしく一限目の授業に備える他のクラスメイトをよそに、斜め前に座っていた彼女を見ていた。
 
彼女の姿がだんだんとぼやけていく 
それはまるで夏のアスファルトに映る陽炎のように、僕は意識が遠のいていった・・・
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朝、カーテンの隙間から射す太陽の光で目覚めた。
そこは古びたマンションの一室だった。
部屋には昨晩飲んだ缶ビールと洗濯をしていない服、机の上には仕事の書類が山積みになっていた。
目の前では裸の女性が鼻歌を歌いながら下着を着ている。
僕はベットの上で体育座りの状態になり煙草に火をつけ眠たい眼でその女性をぼんやり眺めてた。
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着替え終えた女性は「じゃあね」と一言だけ言いそそくさと僕の部屋から出て行った。
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僕は昨日BARで知り合ったばかりの名前も知らない女性と一晩をすごした。
二十代前半くらいの彼女は聞いたこともないような雑誌のモデルをしていると言っていてその話がウソなのかホントなのかわからない。
むしろどうでもよかった。
煙草の火を消しそのままシャワーを浴びにいく。
 
これから仕事というのに朝から猛烈な虚無感が僕に襲い掛かってくる。
「まただ・・・」
シャワーを浴び終え一言つぶやいた。
 
こんな無意味に女性を抱きだしたのはいつからなのだろう?
ふと思った時、僕の中にあった夢で見たあの頃の純粋な想いは日に日に磨り減るように小さくなっていき、気づいた時にはその想いは綺麗に跡形もなく無くなっていた。
 
地元の高校を卒業して都会の専門学校に入りそのままその街で就職した。
僕が入った会社は下請けのまた下請けみたいな会社で上から吐き捨てられたような仕事が毎日山のように降ってくる。
何かを追い求める事がなかった僕は黙々とその仕事だけをこなし家に帰り酒を飲み眠りにつく。
この虚無感はそんな毎日のせいなのかと。
 
シャワーで濡れた身体を拭きしわくちゃになったスーツに着替え家を出る。
最寄りの駅まで歩き満員の電車に20分ほど揺られ会社に就く。
 
会社では朝から山のような仕事が降ってくる。
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僕はパソコンの前に座り黙々と今日の仕事をこなしていった。
 
ある程度今日の自分のノルマを終えた頃
時計の針は22時を回っていた。
パソコンの電源を落とし会社を出て駅に向かう。
 
 
 
 
 
 
帰りの電車の中、いつもの様にiPhoneを取り出しいじる。
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仕事の時使い過ぎたせいなのか電池残量は残り6%になっていた。
ふとSNSのページを開くと地元の同級生が⦅懐かしい♪⦆という言葉と共に
あの頃の中学生の写真を載せていた。
修学旅行や体育祭や卒業式の写真、直接スマホのカメラから撮った写真は少し古びて微かにぼやけている。
何枚目かの写真に目をやるとそこにはあの頃の僕と彼女がいた。
今朝見た夢がフラッシュバックする。
 
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その写真は修学旅行の時の写真でバスの中、他のクラスメイト達と隣同士で笑いあう二人が写っていた。
 
 
 
この写真の中の僕が今までの人生の中で一番幸せだったのかもしれない。
ある出来事がきっかけで僕と彼女はこの数週間後から卒業するまでほとんど話すことはなかった。
中学を卒業してから別々の高校に進学した僕らはもう会うこともなく成人式でも彼女の姿は見なかった。
彼女は高校を卒業して僕とは別の都会の大学に行ったらしい。
当時仲の良かった友達も現在の彼女がどこで何をしているか知らないみたいだ。
 
 
 
また虚無感を感じながら食い入るようにiPhoneに写るその写真を見つめる。
 
電車のアナウンスは次の最寄りの駅名を言っている。
 
iPhoneの電池残量は残り1%を表示していた。
 
僕はまだその写真を眺めている。
 
次の瞬間iPhoneの電源は切れて真っ暗な画面になった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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真っ暗になった画面には疲れきった顔のもう若くもない29歳の男の顔が写った。
 
 
 
 
 
 
 
 
電車は止まり最寄り駅のアナウンスをしている。
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夢で逢えたから  つづく・・・